任意整理は自己破産や個人再生と同じ債務整理の一つですが、債務整理手続きの中で一番融通が利く手続きです。
他の債務整理に比べ費用も安く済み、手続きも簡単なので債務整理の中では利用されている方が多い手続きです。
「債務整理」と聞いてしまうとその言葉だけでなんとなくマイナスなイメージがあると思いますが、実際には債務整理をすることで生活が楽になり債務整理をして良かったという人が多いです。
任意整理とは?
任意整理ってどんな手続きなんですか?
任意整理は今ある借金の利息を0%にしてもらって、借金の元金だけを分割で返済していく手続きだよ。
利息がなくなるから毎月の返済額が低くなって、返済した金額の分だけ元金が減るから、いつ完済できるのかも明確にわかるようになるよ。
確かに毎月の返済のほとんどが利息に充てられて元金が全く減らないって人もいるから、利息がなくなるっていうのは助かりますね。
利息の返済だけだといつになっても完済することができないからね。
任意整理後は36~60回払いになることが多いから3~5年で完済するということになるよ。
・元金のみを3~5年での分割払い
任意整理とは借金の利息をなくしてもらい元本だけを3年~5年(36~60回)の分割で返済していく手続きです。
自己破産や個人再生とは異なり、裁判所を通さず弁護士や司法書士が貸金業者と交渉を行い進める手続きです。
消費者金融以外にもクレジットカードや銀行も任意整理できる
ちなみに銀行の借入とかショッピングのリボ払いでも任意整理ってできるんですか?
消費者金融以外に、銀行カードローンやクレジットカードのキャッシングやショッピングのリボ払いも任意整理することができるよ。
クレジットカードのショッピングも任意整理できるんですね!
ただし銀行を任意整理する場合は口座の凍結、クレジットカードを任意整理する場合はカード解約等があるから少し注意が必要だよ。
消費者金融に限らず、銀行からの借入やクレジットカードのキャッシングやショッピングのリボ払いも任意整理をして、任意整理後の利息をカットして元金だけを分割で返済することができます。
ただし銀行借り入れを任意整理する場合は口座が一定期間凍結されたり、クレジットカードを任意整理する場合はカードが解約になる等の問題があります。
任意整理のメリットとは?
・利息がなくなる
・毎月の返済額が少なくなる可能性がある
督促が止む
任意整理を依頼すると専門家は貸金業者へ受任通知という書類を送付しますが、受任通知が送付された後は貸金業者から本人への連絡は禁止されるので督促がくることもなくなります。
滞納して一括返済を請求されている場合
支払いを滞納していて一括返済を請求されている場合でも任意整理は可能ですか?
むしろそういう状況の人が利用すべき手続きだから大丈夫。
ただし、滞納したまま放っておくと裁判を起こされてしまう可能性もあって、裁判になった後だと任意整理の交渉が難しくなるんだ。
だから滞納している場合はなるべく早く相談すべきだよ。
借金の返済を滞納していると貸金業者から一括返済を求められますが、一括返済を求められている場合も任意整理をすることができますし、任意整理の依頼後は督促が止まります。
滞納している借金でも任意整理の交渉は可能ですが、滞納中の遅延損害金はカットできず元金+遅延損害金を分割返済することになる可能性があります。
遅延損害金がカットできない場合は返済額も増えますし、なるべく早めに相談をしたほうが任意整理の交渉は進めやすくなります。
利息がなくなり返済が楽になる
借金を毎月コツコツ支払っていても、そのほとんどが利息部分の返済となり元本は少ししか減らないのでいつ支払いが終わるのか先が見えない・・・という状況の場合
これに対して任意整理をするとその後の利息は0%にしてもらえますので、支払えば支払った分だけ元本が減ることになります。
元本がそのまま減るのでいつ支払いが終わるのかも明確になります。
※ただし銀行等での借り入れで金額が大きくて、毎月の支払いが低額な場合は任意整理をすると支払額が増えるという場合もあるのでこの点は注意が必要です。
任意整理後の分割回数
「36回」~「60回」が基本となるので3~5年払いになります。
しかし絶対に60回以上の分割も組めないわけではないです。
相手方の業者によっては36回以下の分割しか認めない業者もいますし、そもそも任意整理は法的な強制力はないため任意整理に応じない業者も存在します。
また、任意整理に至るまでの返済状況(数回しか返済していない等)や収入、年齢等を考慮して判断されるので、すべての場合にこの分割回数で成立すると言えるものではありません。
利息カットのメリット
利息18%で50万円を借りて、毎月1万円の返済を行うと以下の内容になります。
・完済までにかかる期間=7年10ヵ月
利息だけで43万円以上支払うことになるので、元金も含めると完済までに支払う総額は93万円以上になります。
50万円の借金を任意整理して60回の分割払いになった場合。
・完済までにかかる期間=5年
・毎月の返済額=8,400円
取引内容によって異なりますが、このように任意整理を行うことで完済までに支払う金額が大幅に減り、完済までの期間が短くなり毎月の返済額も減ることがあります。
・完済までの期間 7年10ヵ月⇒5年
・毎月の返済額 10,000円⇒8,400円
任意整理のデメリット
任意整理はメリットがある手続きだということはわかりました。
ただ、任意整理するとブラックリストに載るとかのデメリットもあるんですよね?
そう、任意整理するとブラックリストに載ることになるよ。
ブラックリストに載ると数年の間は借入するとか、ローンを組んだりするとかカードを作ることが難しくなるんだ。
ただ、借金ができる状況だとどうしても借りてしまうから、逆に借り入れ等ができなくなることはデメリットではなくメリットだと考えることもできるよ。
確かに・・・お金がなくてもついカードで買い物してしまうことがあります。
他のデメリットとしては利息のカットに応じない、任意整理できない貸金業者もあることだね。
・任意整理に応じない会社もある
・返済額が増えてしまうこともある
ブラックリストに載る
任意整理をすると信用情報機関に事故情報として残り、いわゆるブラックリストに載ることになります。
※参考:CIC【信用情報とは】
任意整理をするとブラックリストに5年ほど載ります。
その間、借り入れをしたり、ローンを組んだり、クレジットカードを作るとか保証人になるのは難しくなります。
相手方の業者によっては利息のカットができない
任意整理は裁判所を通さずに、専門家と貸金業者との任意の交渉で行います。
利息のカットに応じるかは貸金業者次第になりますので、相手方の業者によっては利息のカットに応じない場合があります。
しかし借り入れから数か月しか経っていないような場合は詐欺的な借り入れともとれますので利息のカットは困難になります。
最低でも半年間~1年間は支払いをしていないと難しいでしょう。
毎月の返済額が少なくならない場合がある
銀行の借り入れ等の場合、借り入れ金額が多くて元々の毎月の支払が少ない場合3年から5年の分割では毎月の支払金額が増えてしまう場合があります。
その金額を支払えない場合は通常、個人再生や自己破産を検討することになります。
任意整理と他の債務整理との違い
任意整理とその他の自己破産とか個人再生の債務整理って何が違うんですか?
任意整理は利息はなくしてもらって借金の元金を分割で返済する手続きだから借金の元金自体の減額はないんだけど、個人再生は借金自体を減額してもらって減額された金額を分割で返済することになる。
自己破産は借金の返済そのものを免除してもらうことになるんだ。
個人再生では借金が減額されて、自己破産では借金の支払い全部を免除してもらえるんですね。
そう、ただし任意整理とは異なって個人再生と自己破産は裁判所での厳格な手続きが必要になるんだ。
また、個人再生と自己破産はすべての借金が対象にしなければいけないけど、任意整理は一部の借入先だけを任意整理の対象にすることもできるよ。
任意整理のほうが簡易な手続きで融通が利くんですね。
そうだね。
さらに任意整理は収入証明とか手続きに必要になる書類も少ないから、個人再生と自己破産に比べて家族にばれにくいというのも特徴だね。
任意整理と他の債務整理手続きである個人再生、自己破産との違いについて。
・裁判所を通さずに交渉ができるので手続きが早く終わる
・一部の債権者のみを任意整理することができる
・家族に秘密で手続きができる
任意整理は借金の減額がない
任意整理は利息を支払う必要がなくなるだけですが自己破産は借金のすべてを支払う必要がなくなり、個人再生は借金を一部免除してもらい残りの金額を支払っていくものです。
しかし、利息をカットしますので任意整理をしない場合と比べて将来的に完済までに支払う総額は任意整理を行ったほうが少なくなります。
また、過払い金がある場合は引き直し計算によって借金が減額されることがあります。
任意整理は裁判所を通さない手続き
自己破産と個人再生は裁判所を通して行う手続きですが、任意整理は裁判所を通さずに弁護士、司法書士が業者と交渉を行います。
一部の業者だけを任意整理の対象にすることも可能
自己破産と個人再生はすべての債権者が対象となるので、例えば家族から借りている分はキチンと返したいとか、自動車ローンだけを除外するということはできません。
ただ、クレジットカードは持ち続けたいので対象外にしてほしいという人は多いですが任意整理をするとブラックリストの影響がでます。
また、すべての借金を任意整理しなければ生活の再建ができないような状況であれば全業者まとめて整理すべきでしょう。
家族や勤務先にばれにくい
個人再生や自己破産では同居の家族の収入証明等を求められることがありますが、任意整理では家族の収入証明等は求められませんので、債務整理手続きの中では特に家族や勤務先にばれにくい手続きです。
アルバイトやパートの方でも可能
個人再生の場合、安定した継続的な収入があることが条件となりますが任意整理にはそういった条件はありません。
アルバイトやパートの方も毎月きちんと支払っていけるのであれば任意整理を行うことが可能です。
任意整理では官報に載らない
自己破産や個人再生では国が発行する官報に住所や氏名が載りますが、任意整理では官報に載ることはありません。
どのような場合に任意整理を選ぶべきか
債務整理の中で任意整理を選ぶべきなのはどういった場合ですか?
まずは借金の返済が難しい状況であるということと、借金の元金を原則36回~60回程度の分割で支払える見込があること。
後はどうしても一部の借金を債務整理の対象にしたくないという場合とかだね。
借金の元金を36回~60回での分割払いが難しいようであれば、任意整理ではなく他の債務整理を検討したほうがいいかもしれないね。
いずれにしても一人で判断せずに専門家と相談すべきだよ。
返済に追われている
基本的に債務整理は生活の再建のために行う手続きなので任意整理をした方がお得だからとか、そういった理由ではすべきではないです。
借金を36回~60回分割で今後も支払っていける
元金を36~60回の分割で支払っていけそうなら任意整理、厳しい場合には個人再生や自己破産をするということになります。
借金が膨れ上がった後では任意整理では解決できない場合があります。
Aさん
・毎月の手取り額 25万
・毎月の支出 20万
・借金総額 100万円
上記の場合、手取り額から支出を差し引くと5万円になるので、毎月の返済にあてられる金額の上限は5万円ということになります。
100万円の借金を任意整理して36回の分割払いになると毎月28,000円ほどの返済になります。
収入から支出を差し引いた毎月返済に充てられる金額である5万円よりも、任意整理後の返済額である28,000円のほうが少ないためこの場合は任意整理をすることが可能ということになります。
一部の借金を除外したい
例えば自動車ローンを組んでいる方が自己破産や個人再生を行うと車は引き挙げられてしまいますが、任意整理では自動車ローンを除外して手続きするということが可能ですので仕事や生活でどうしても車を手放すことはできない人におすすめです。
家族に秘密で手続きを行いたい
任意整理は基本的に家族に秘密で手続きが行えます。
また弁護士、司法書士には守秘義務もありますので安心です。
任意整理を選ぶべきではない場合
厳密には60回分割以上の分割も組んでくれる業者はありますが、基本的には36~60回分割でも支払いができないという場合は任意整理ではなく個人再生や自己破産を検討すべきです。
また、毎月の支払金額は多少余裕を残して計算するべきです。
任意整理をしたいのであれば借金が膨れ上がる前になるべく早めに相談をするべきです。
生活費にあてるために借金をしたとか、借金を返すために借金をしているいわゆる自転車操業の状態であればすぐに専門家へ相談すべきでしょう。
Bさん
・毎月の手取り額 25万
・毎月の支出 22万
・借金総額 200万円
上記の場合、手取り額から支出を差し引くと3万円になるので、毎月の返済にあてられる金額の上限は3万円ということになります。
300万円の借金を任意整理して36回の分割払いになると毎月84,000円ほどの返済になります。
収入から支出を差し引いた毎月返済に充てられる金額である3万円よりも、任意整理後の返済額である84,000円のほうが多いためこの場合は任意整理をすることができないということになります。
任意整理まとめ
任意整理は自己破産や個人再生と比べ費用も安く、裁判所を通すこともなく、集める書類もほとんどなく本人の手間が少なく債務整理手続きのなかでは1番簡単な手続きと言えますが、任意整理にもブラックリスト等のデメリットが存在しますので簡単な気持ちで行うものではありません。
しかし相談を躊躇している間に借金が増えてしまうと任意整理では解決ができなくなることもあります。